ゆったりとした呼吸で日常の豊かさを味わえるドラマ
最早上質なヒーリングドラマ
「良いドラマ見たーーー!!」というのが、一番の印象。
何が良いかなんて人それぞれだから、あんまり「良い」とか「悪い」とかで
表現したくはないんだけど、それでもなお、 あえてそう言わせてほしくなるドラマだった。
まあ、好みはかなり分かれるタイプのドラマかもしれない。
スローライフでまったりゆったりした空気感の中に
ありふれた日常生活のリアリティがふんだんに盛り込まれていて
人生の深みや豊かさが細胞のひとつひとつに沁みこむように
じんわりじんわり味わわせてくれるようなドラマ、と感じた。
私たちの日常って、どう捉えるか、どう感じるかで
その味わいってまるで変わる。
当たり前の繰り返しの何の変哲もないサイクル、と感じるか
一瞬一瞬が奇跡の積み重ね、と感じるか
大げさに言えば、それくらいの落差があると思う。
物語はすごく平凡で、どこにでもある人生のひとこま、なんだけど
やっぱりそこには、関わる人たちの人生ドラマが凝縮されていて
その尊さとか、豊かさとか、そういうものが溢れていた。
そう、このドラマを見ていると、豊かな気持ち、感覚になるのだ。
上質の食事をいただいた時のような、体中が満たされる体感で いっぱいになる。
私の日常がこのドラマの世界観や空気感と
かなり共通しているから共感しやすく、
ドラマだからより、自分の理想の姿として見ることができて、
その分、豊かな気持ちになれるからかもしれないけど。。
セリフのひとつひとつが
コマ割のひとつひとつが
そこに流れる空気の流れひとつひとつが
なんと丁寧なんだろう・・・って・・・。
自然と呼吸はゆったりとなるし
身体の力はゆるんでくるし
でも、大切なことは、空気感として細胞を通して沁みこんでくる。
ヒーリングドラマと表現してもいいくらい(笑)
WOWWOWの連続ドラマW、さすが上質のドラマが多いと評価が高いけど
こういう路線も本当に素晴らしいですね。
淡々としているけど見応えは十分なドラマだと思いました。
自立と自由
私はこの作品の根底に流れるテーマは
「自立と自由」
じゃないかと感じた。
主人公の「アキコ」は、飲食店を経営している母の急死を機に
務めていた出版社を退職し、店を改装してサンドイッチとスープの店を始める。
とりあえず自分が無理なくやれることから、と、
メニューも最小限、営業ペースも無理のないやり方で。
そんな営業方針はこれまでの常識からは少々外れていて、
向かいの洋食店を古くから営業しているママは
「もっとこうするべきだ」
「商売というのはこういうものだ」
と、何かにつけてアキコに忠告してきたりする。
こういう構図って、私たちの日常でもよくあることじゃないかと思う。
私自身も、まさにここ数年は、
パターンは違えどアキコのような体験を味わっていたりもして、
アキコの気持ちも、ママの気持ちも、自分ごととして共感しながら見た。
自分の生き方や在り方がまわりの常識とは違う時、
どちらの生き方を選ぶか、の選択の岐路がやってくる。
まわりに合わせて生きるか、自分の生き方を選ぶか。
私はこのドラマのアキコと同様、自分の生き方を選んだ。
そうなると、より一層、自分との対話が深まるし、
自分について明晰になっていく。
アキコもそんな自分の変化を、以前の仕事の相手で尊敬している山口先生に
手紙の中でしたためている。
そして、そうなってくると
「自分とは違う価値観の人とどう関わるか」が
ワンセットで意識的になってきて、
このドラマの根底のテーマ、「自立と自由」ということにも
繋がると思うのだ。
もたいまさこさん演じる「喫茶ハッピー」のママに
ああしろこうしろと、彼女のやり方で説教されてしまうアキコ。
自分自身の在り方や生き方をゆるし切れていないとき、
しばしばこういう現象は起きる。
要するに、「ハッピーのママ」が自分の代わりに、
「そのやり方でいいの?」
「自分の在り方は通用しないんじゃないの?」
と、問いかけているようなものだ。
自分で自分のことはなかなか分かりにくいものだけど
他人を通して見せてもらうと気づけることって多い。
自分で自分をゆるす、って、ある種の「覚悟」もいると思う。
自分で自分の生き方に責任を持つ、っていう。
その先に、「自立」があり「自由」があると思う。
人それぞれ価値観が違うから、いろんな意見や感じ方と接することがある。
そういう他人の意見に流されない、という覚悟。
他人の意見を無視しない、という覚悟。
自分の在り方を良くも悪くも直視する、という覚悟。
自分の在り方で生きる幸せに遠慮しない、という覚悟。などなど・・・。
胎がすわらないと、
「自分で自分をゆるす」って、
「自立」するって、
「自由」であるって、
実はできないことなんだよな、って思う。
でもそうなって初めて、
自分とは違う他人を本当の意味で尊重することができるし、
自分の自由も他人の自由も奪わずにいられるんだと思う。
アキコが最後にこう語っている。
「今までの自分は、自分で自分を不自由にしていたのだ。
自分が自由になれて、人との時間が初めて始まるのだ。」
私も本当にそう思う。
何度も、うんうん、ってうなずきながら見たのでした。
ネコのTAROと家出先
ドラマのタイトルにもある「ネコ」の「TARO」。
ある日ふらりとやってきた野良猫、おとなしくて人懐こくて可愛い。
でも、ある日、これまたふらりといなくなってしまうんだよね。
彼にも彼の人生があるよね、と、寂しく感じつつもそれを受け入れるアキコ。
どうなるんだろうなあ、帰ってくるのかなあ、、 、って
気になって見てたけど、結末に感動。
アキコには胎違いの弟がいて、お寺で住職をしてる。
そんな情報をもらったアキコは、お寺を訪ね、弟と再会するんだよね。
でも、自分の素姓は一切話さずに。
だから、弟はアキコが自分の姉だとは知らない。
だけど彼は、何か不思議な縁をアキコに空気で感じてる。
そんな二人のやりとりも、二人の間に流れる空気も、
なんだか心がじんわりあったかくなるようなやさしい時間で・・・。
TAROはどうやら、弟の寺に出入りするようになったみたい。
明確には描いてないんだけど、
「最近新しいネコが出入りするようになったんですよ」
という弟住職のセリフが語ってた。
私は、きっとそれはTAROなんだろうなあ、
そうだったらいいなあ、って 思って見たんだけど、
その余白感の演出に胸がふるえた。
泣きそうになった。
そういう、見るものの想像を自由にさせてくれる空気感、余白感が、
このドラマを支えてくれていて、 その解放感と心地良さがたまらないのでした。
しまちゃんの魅力
このドラマを語るのに忘れてはおけない人材。
アキコがお店を始めるにあたり、従業員を募集するんだけど、
なかなかピンと来る人が来ない中、ある日、やってくるのだ。
スーパー逸材、「しまちゃん」が!!
しまちゃん、最高に素敵なんだ。
面接でいろいろ話し始めた時、
「わあ~、良い人来てくれて、よかったね!!
アキコ、フィーリングぴったりだよね!!」
って、私まで嬉しくなってしまった(笑)
素直でピュアで一生懸命でちょっと不思議で、
彼女がいるだけでその場がクリーンになるような。
精霊みたいなコ。
ちなみに演じているのはファッションモデルの「伽奈」さん。
ドラマでは初めて見たけど、この役にピッタリの空気感だと思った。
私もしまちゃんみたいな空気感の人、大好きで、
普段の日常生活の中でもあんなタイプの友人が多いかも。
このドラマのもう一人の主役、しまちゃんを
思い出すだけで顔がほころんでしまうのでした。
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