ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険
【ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険】は、2003年に公開された映画です。
デッドエンドレース
今回の映画は、敵であるガスパーデによって操られ、そのガスパーデ曰く「暇つぶし」だと言う、海賊による海賊のためのレースが舞台です。
一味がたまたま入ったハンナバルという港町でのバーから始まります。お金がなく、「お金が欲しい」というだけの理由で一味が参加するレースは、巨人や魚人も参加し、賞金は3億ベリー!それまでビビっていたナミも、この額に参加を決めます。ここはいつも通りですね。(笑)
この場所に来たことがあるというロビン、とある海賊船に乗っていた時、とのことですから、クロコダイルと手を組むより前ということになりますね。
コインを払った海賊に、ゴールである島のエターナルポースが渡されますが、このエターナルポースはガスパーデによって偽装され、海軍の要塞へのエターナルポースでした。これについて、後に出てくるガスパーデの船に乗っていたアナグマが、「船で大量のエターナルポースを見た」と言います。
このガスパーデは、元海軍ですので、海軍の要塞へのエターナルポースを大量に手に入れられたのではないかと思います。その理由として、私は2つ考察しました。
①海軍に属している時に、大量に手に入れていた、もしくは、同じものを大量に作らせた。
②今でも、海軍の誰かと繋がっている。
どちらかと言うと、ありえそうなのは①の方ですね。エターナルポースの大量生産をする技術もあるだろうし、②が有り得るとすると、それは誰だという事になりますし。世間的に海賊は犯罪者ですから、海賊と繋がっている海軍もおなじく犯罪者になってしまいますので。
結局このレースは、ガスパーデの卑怯な手によって、優勝者は出ませんでした。
この映画から見える一味の信頼関係とそれぞれの性格
海賊が集まる食事の場で、いつも通り騒ぎに巻き込まれるルフィ。その騒ぎを見ての仲間の反応は、
ナミ「ルフィ何やってるの?」
ルフィ「何でもない。ケンカだ!」
ナミ「あっそう。迷子にならないでね。」
です。(笑)
無頓着で、「いつもの事」感がにじみ出ていますね。ルフィの行動に慣れてきたのか、はたまたルフィへの信頼感からか、この程度のことで驚ていては、心が持たないと言った所でしょうか。
しかし今回の映画では、ルフィに対して、「いつものルフィと違うな」と思ったことが、2つありました。
まず一つ目、敵のガスパーデに「強ぇやつは好きだ。部下にしてやる」と言われた時のルフィの返事です。
私の中のルフィの認識としては、何より先に「誰かの下につくのは嫌だ。おれは船長だ。」という考えではないかと思います。しかしここでのルフィの返事は、「やだ!こいつからはクズのにおいがする。」でした。
ルフィ特有の野生の勘が働いたのでしょう、ガスパーデは部下からも恨まれるようなクズです。
そして二つ目は、ガスパーデに、ルフィの宝物である麦わら帽子を傷つけられた時。ルフィが「キサマぁー!」と叫びます。ルフィの口から「キサマ」という言葉が出ることはとても珍しいと思います。そうとう怒ったのでしょう。大切な宝物ですからね。
この傷ついた麦わら帽子を、ナミに「治してぇー」と頼むルフィ。「ハイハイ。」となだめるナミ。どっちも可愛いです。
さらに、ルフィの器の大きさが分かるシーン。
一味に銃を向けるアナグマに、「この船が一番弱そうに見えたんだ!」と言われ、ルフィは大笑い。何気ないシーンですが、ルフィの器の大きさがよく表れています。これは、幼い頃、酒をかけられても笑っているシャンクスから学んだ心なのだろうと思います。
続いて、サンジの優しさがよく出ているシーン。麦わらの一味の船で、ナミに説教され一人で泣くアナグマに、「生きていこうと思うとけっこう辛いことばっかだったりする。それでも生き抜けば、見える明日ってのがあるんじゃねーの?」と声をかけます。現在、原作でサンジの出生が明らかになっていますが、アナグマを見て、辛いことを耐え抜いて生きた自分の幼い頃に重ねて出た言葉なのではと思います。
さらに、セリフの細かい所にも一味の性格が出ています。敵の船に乗り込む際のウソップのセリフ。「よし、俺は援護してるから、チキンと仕事しろよ!」ここです。(笑)
ビビって噛んでいるウソップ。芸が細かいですね。しかも、顔は平静を装っているので、よく聞いてないと聞き逃しそうな細さです。とても面白いですね。
そして、その後のゾロ。
おじいさんを助けるから、自分の船に乗せようとした時、おじいさんは、ボイラー室に忘れ物をしたので、後から行くと言います。この時ゾロは、おじいさんが本当の心を読み、止めることもせず、わかった、と言います。ゾロは本当に、人の表情や言葉から心情を読み取ることに長けていますね。これは、一味で一番と言っても過言ではないと思います。そして、気づいても何も言わない、ここが、サンジとは逆の優しさで、このバランスは本当に良く取れています。
麦わらの一味の航海士ナミについて
映画の始まりは、麦わらの一味の船が海軍に追撃されている所から始まります。その猛攻をかわしながら、嵐の中を進む船を見て、海軍は「優秀な航海士だ」と褒めるシーンがあります。敵ですら褒めたくなるナミの航海術は、経験や勉強だけでは身につかない、天才的なセンスが伴っていると思います。風のふく方向や風音を感じ、一瞬のスキも見逃さず仲間に的確な指示を出すシーンは本当に痺れますね。
ガスパーデの船に追いつき、戦うルフィですが、天候は大荒れ。ここでもナミが何か気づきます。「なんだろう、以前にも感じたことがある…」というナミのセリフ。そして、ここで現れるのはサイクロンです。この「以前」は、原作で、ネフェルタリ・ビビを船に乗せ、アラバスタへ向かう時のことだと思います。風や空気の違いを肌で感じ、サイクロンが来る方向から船を避ける指示を出していますね。
これからの新世界を渡る重要な情報として、ナミの航海術は絶対に欠かせない要因となっていきます。
この一味の航海士ナミ、ご存知のように大変辛い過去を持っています。海賊に親を殺されても笑って生き抜く強さを持っているナミだからこそ、アナグマの発した「殺せよ!生きる意味なんてない!」という言葉に反応します。ゾロに刀を借り、「その甘えた考え方、ぶった斬ってやる!!」とお怒りです。大切な人に与えられた命で生きている今があるからこそ、アナグマが命を粗末にしていると、この言葉にナミ自身も傷ついたのではないてなしょうか。そして、幼い頃の自分と同じ思いをしていると知ったアナグマに対して、強く生きて欲しいと思っての発言のように見えました。
最後、アナグマ達と別れる際、自分たち海賊と関わっていたら、悪人扱いされるからと、切り離します。
その時ナミは、「もう生きる意味ないなんて言わないでよ♪じゃーね!」と笑顔で送り出します。この時のナミの笑顔がその全てを物語り、アナグマはもう、大丈夫だと確信したのでしょう。本当に強い女性ですね。
私も、いつかこんなに芯の強い女性になりたいと思っています。
麦わらの一味とシュライヤの過去
シュライヤは、8年前にガスパーデの襲来によって家族と友達を奪われます。そこから8年間、「ガスパーデに復讐するために生きてきた」と言います。
ここで思ったことは、ナミの過去に似ているということ。ナミは、海賊に親を殺され、それからの8年間、その海賊を恨み続け生きていました。
この類似する過去が、今回一味とシュライヤ、そしてアナグマを引き寄せたのではないかと思います。
このシュライヤ、凶暴かと思いきや、家族想いで、おじいさんの身体に気をつかったり、本当はとても優しい人なんだと思います。ルフィの帽子が大切なものだと知り、拾って持っていたり、この人柄を感じ、アナグマが少しずつ心を開いていく様子も描かれていますね。
しかし、フラフラになりながらもガスパーデの前に立つシュライヤをルフィが殴って気絶させるシーンは、本当にルフィって不器用だなと思います。(笑)その状態じゃ危ないと思っての行動でしょうが、そのやり方しか思いつかないのでしょうか…。
原作でも、ゾロにも同じようなシーンがありましたが、本当にこの2人は不器用ですね。(笑)まあ、それが2人のいい所でもありますよね。
この事について、最後はしっかりとシュライヤに睨まれるルフィでした。
おじいさんとアナグマ
おじいさんとアナグマは、本当の家族ではありません。
アナグマはおじいさんに助けてもらったと知り、それでも死んだ方がいいと言います。しかし、麦わらの一味の船に乗って、死ぬ気で生きるルフィ達を見てアナグマは何か大切なことに気づきます。無茶をするルフィにアナグマは、「死ぬの怖くねーのかよ!」と聞きます。「こわいよ。」と正直に認めるルフィ。しかし、「幼い頃恩人に命を助けられた、だから命を粗末になんかしない」と言います。そして、ここでこの映画で2回目になるセリフ。「おれが決めたんだ。そのために戦って死ぬなら別にいい。」
海賊王を本気で志すルフィだからこそ言える言葉ですね。二つのセリフは、矛盾しているようにも見えますが、その言葉にはどちらも信念が宿っています。ルフィは命を捨てていいとは言っていません。自分の信念のために死ぬのは、構わないという事です。一件矛盾しているように感じるこのセリフも、ルフィの強い気持ちの表れで、その決意を示しています。このセリフは、「死んでもいい」と思っているアナグマの心へ、深く刺さったのではないでしょうか。ルフィ達と出会ってからアナグマは、おじいさんを助けに行き、「生きたい」と思うようになりました。
そして、このおじいさんですが、映画を通して思ったことは、「生きる覚悟」を誰よりも持っている人だということです。船とそのボイラーに愛着があり、最期を見届けたいと言うおじいさん。ここで、誰もが、船と一緒に沈むつもりだと思ったと思います。私もそう思いました。しかし、このおじいさんの生きる覚悟は半端ではありません。戦いが終わり、沈む船から、浮き輪を体に巻き付け男2人を抱えて小舟で脱出します。そして、目を覚ますシュライヤを見て「ワシも生きるのに必死でな。」と。強いですね。どんな目にあっても、「人生は面白い。生きていればこそ、きっといいこともある。」と笑えるおじいさんに、強く生きる意味を思い知らさせる映画です。
終わりに
この映画は、原作の物語を元に作られてあるなと思いました。
例えば、ナミの「以前にも感じたことがある。」というセリフや、邪魔な味方を殴って気絶させるルフィ(くまと戦うときサンジを気絶させたゾロ)や、ルフィのゴムゴムのバクバクという技は、今回の敵と同じロギアの能力者であるクロコダイルにも使っていましたね。この時、クロコダイルと同じく、「ふざけてんのか」と言われていました。さらに、全身アメのトゲで向かってくる敵に恐れず攻撃をするルフィは、バラティエでのトゲマントを思い出します。他にも原作でも出てくるセリフが何度も使われていたり、原作をよく知っていれば知っている程、面白い内容ではないかと思います。
「生きる意味」というものをもう一度考えられる、とてもいい映画です。
強くなくても、生きていれば見えてくるもが、必ずあると信じさせてくれる映画でした。
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