1日1日を生きていく大事さを感じよう
余命あと少しでやさぐれるキラ
自分があと1年で死んじゃうってわかってて、どう生きていけるんだろうか。自分だったらって思ったら…まっすぐには生きれないかもしれないですよね。キラみたいに、自分が生きてるって感じるために、どうしたらいいだろうって悩んで、自分を傷つけてみたり…はしないかもしれないけど(笑)。自分だったら、とりあえず学校辞めるかな!そして一人になる!でもキラはそうしなかった。やっぱり寂しかったんだよね。まだ、自分が自分の可能性の限り生きたとは言えなかっただろうし、生まれたのになんで死ぬんだろうとか…そういうこと考えても考えてもしょうがないし…わかってるけどどうやったら受け入れられるのか、わかんないよね。よく死に直面したとき、その人の人間性が出るとか言いますけど、キラにとってはそんな人間性ができる前に告げられただろうから、そりゃー受け入れられないわ。やさぐれてもしょうがない!親だって受け入れられないわ!
キラで印象的なのは、涙ですよね。イケメンの涙ってなんでこんなに胸がざわついちゃうんでしょう…本当はずっと…倒れそうな自分を誰かに支えてもらいたくて寂しくて、辛かった。でも辛いと言えなかった。そんな気持ちがもうね…伝わってきました。一番印象的なのは、はじめの涙よりは、ニノと離れないとニノに何かすると言われてわざと離れたときに、ニノから「戻ってきなさい!」と一喝されて涙するあのシーンですよね…あーーほろりと涙が出てしまうシーンです。
ニノのやさしさ
ニノは本当に優しき人。過去のトラウマから人と関わることはやめたけれど、心はいつも明るくて、先生もいたし、お母さんやお父さんもいたし。キラが
死にたくない…
と言っていたと知ったときのニノの行動力が素晴らしかったです。正義感とか意思の強さを感じました。顔をかくしているけれど、背筋はいつもピンと伸びて自分の進みたい方向を向いている。キラはその背中にいつも元気づけられて、がんばろうと踏ん張れました。一人だったらただ立っていることですらできなかったかもしれない。ニノのおかげでキラがいるし、キラのおかげでニノもトラウマに立ち向かい、生き方を変えていく。死に直面する本人もその周囲の人も、もう時間がないと思えば、今まで何もしていなかったのがうそのように力が湧いてくる。そんなことになるんですよね。人間崖っぷちにならないとがんばれないんですよね…だって日本とか超平和じゃないですか。生きるか死ぬかみたいな話って一般家庭には絶対ないし、逆境に立ち向かうみたいなことって全然できないです。あの獣を攻撃して食べないと自分は生きていけないんだ!みたいな弱肉強食の世界がすごく嫌いですよね。簡単に助け合いとか絆とか言って生ぬるーく生きていると、全然がんばれない人になっちゃいます。苦しいときはチャンスなんだと思えるようになりたいしね!ニノの過去のトラウマはけっこう強烈なものだったし、キラの死ぬことへの恐怖の気持ちも強烈でした。これくら衝撃的な出来事を人生のどこかで出会えたほうが豊かになりそうです。このマンガを読んでいると、あーーがんばれーー!って本当に思います。
先生!
インコがしゃべるというファンタジーがこの物語ではかなり重要です。友達のいないニノには、唯一の心の支え。キラにとってもニノとつなげてくれる大切な存在。これって、普通に先生がしゃべれるから成り立ってそうだけど、しゃべらなくてもこの二人は出会うべくして出会えたと思いますね。ニノがキラを助けたいと思ったのはニノが強い心を持っていたからだしね。ニノが苦しいとき、うれしいとき、どんなときにも先生はいて、まさか死んでしまうところが描かれるとは思ってもいませんでした。でもね、キラが生きた分、どこかで死ぬことを描写する必要はあったんだと思います。
どんなに信頼していても、人間はしょせん孤独なんや
これは響いたなー…いったいどこでそんな言葉を覚えるんだよ、インコが(笑)。これは最大の応援の言葉ですよね。人は人と関わることに疲れたり、絶望したりするんだけど、でも関わることでうれしかったり、世界が広がったり、心が満たされていると感じたり…それも人と関わるからできること。二人の愛から孤独に生まれて、愛情を受けて子どもは育つから、成長してもそれを求めてしまうのは当たり前だよなーって。先生の言葉は本当に深いです。そしてその大切な大切な先生の死をそのままにしないで、ニノとキラの間に転生させるという…あまりに綺麗なラストでした。人と人の輪廻が、そうであってほしいなと思いましたね。願いや想いがめぐりめぐって求めたところに戻ってきてくれたり、いいことや悪いことを起こしたり。人間の世界はそういうふうにできているような気がしてなりませんね。スピリチュアルだけど、そういうふうに願わずにはいられません。ニノとキラの幸せな様子をもっと見たかったなー…
矢部!
矢部は強烈でしたね。ワルのときのキラを本当に大切に想っていて、キラがいなくなる!って思っちゃってニノをどうにかしようみたいな…でも好きになっちゃうんだけど…だけど、最終的には涙ばかり流す熱い野郎になりましたね。憧れの気持ちだったり、好きな気持ちだったり、気持ちにどんな名前をつけたらいいのかって思うけど、矢部はニノとキラを愛してたからね。こいつは相当いいやつだと思いました。澪に最終的には助けられていくけれど、矢部の元来の良さが最後の最後まで光ってます。心がほんとに弱いやつで、失いたくないから傷つけてみたり、自分を傷つけてみたり、そういうあたりはキラとそっくりな奴だと思います。これから澪の尻に敷かれながら、でもその持ち前の大切な人を大事に想える力を武器に、素敵なライフを送るんじゃないでしょうか。彼ならきっとできると思います。
自分の選択を間違いじゃないと信じたい
最終巻では、ニノがトラウマの張本人と出会って一瞬ひるむけど、培ったもの・支えてくれる人たちを支えに立ち向かっていく姿、本当に素敵でした。絶対、自分が恐れている部分に立ち向かうって怖いです。人間、恒常性を保とうとするから、今いるところから動くってすごいエネルギーが必要だし、苦しさを想像してしまうし…だけど、飛び込んでみたら案外とそうでもなくて、なんで怖がっていたんだろうって思うことが多いと思うんです。体裁とか、自分を守るためとか、誰かのためとか、余計な理由をつけてやらない理由を探してしまうけど、それだと全然前には進まないんだよね…
キラがメッセージで残しているように、ニノの素敵なところは、まっすぐと立っているその後ろ姿です。常に前向きに、キラのために強くあろうとするその姿に、キラも心打たれているから…このシーンでしみじみと感じたことは、やっぱりがんばっていればその背中をみて何かを感じてくれる人がいるってことでしたね。がんばってもいないのに、評価されたいというのはだいぶおこがましいんだなーって思いました。命がなくなるわけじゃない、絶対大丈夫!って思って行動できる人間と、いつまでも何かにしがみついて動けずにいる人間、どちらがかっこよく見えるのかって話です。そりゃーがんばっている人を応援したくなるし、自分もそうなりたいと思うでしょう!
ニノとキラのこれからの人生は、きっと彩り豊かな人生だろうね。美しいラストだ!
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