大人も子供も楽しめる
大人も子供も楽しめる作品
この作品を初めて観たのはまだ小学生のころ、ポケモン達のバトルやミュウツーの圧倒的な強さ、そしてミュウの神秘性にワクワクしながらこの作品を楽しんでいました。ポケモンバトルに夢を見て、強いポケモンに胸を躍らせていた当時の子ども達にとっては王道な作品だったとも言えるでしょう。
それから10年以上が経ち、流石に子どものころのようにポケモンにテンションが上がる歳でもないのですが、今でもこの作品は見返して心に響くものがあります。そのころは深く考えなかった一つ一つの事象やセリフに込められた意味がとても深く、それでいて昔のワクワクした気持ちも呼び起こさせる、そんな作品だからこそ、未だに初代ポケモン世代に愛される作品なのでしょう。
子どもだったから楽しめた部分と、大人だから響く部分、更にはそんな大人でも答えが出せない問い、そんな要素がバランス良くちりばめられた名作だと思います。
自分が存在する意味とは
この『ミュウツーの逆襲』の大きなテーマは「自分とは何か?」という部分であり、それをポケモンのクローン体を使って問いかける、なかなか強いメッセージ性を持っています。
人間によって創られたポケモンが人間の業に怒り、復讐へと向かう。しかし、主人公サトシの行動を通して人間の美しさを知り、思いとどまる。最後はその答えを探して去っていくミュウツーとクローンポケモン。
その後ろ姿から投げかけられる「存在」に対する問いはなかなか強烈だったことを良く覚えています。これは人間誰もが一度は思う疑問への問いかけだったんだなぁと改めて思います。人間によって人間のために創られた存在が、人間のためだけに生きなければならないのか、であれば自分自身はどうなのか、そんなことを考えさせられます。
(その後の『ミュウツー!我ハココニ在リ』という作品で、一定の答えを示したのもまた面白いところですが。)
ミュウが意味するところ
ミュウツーのオリジナルとして登場するミュウ。このポケモンは言葉を話しません。復讐に燃えるミュウツーをある意味無邪気に、ある意味嘲笑うかのように、不思議な存在として作品に現れます。
元々ゲームの中でも本編には登場しない幻のポケモンということで、本当に謎の存在なのですが、このミュウが持つ意味というのもまた深いように感じます。
ミュウの行動にはまるで子供のような純粋さを感じることができ、その純粋さが持つ鋭さにミュウツーが苦しめられます。その姿からは、自己矛盾と戦っている大人や、平和思想が抱える矛盾と戦う現代世界そのものを感じるような気がします。
さらに、時よりミュウがそれをあざ笑うような表情を見せるのが、我々に対する神の吹聴にも感じられ、色々と考えさせられます。
実はこのミュウというポケモン、初期の構想ではミュウツーと同じく喋る設定だったそうで、ミュウツーを馬頭したり、あざ笑うようなセリフが含まれていたと言われています。それが制作が進む中でセリフを全てカットされて今の形になったそうです。セリフが無いことで、ミュウツーとのやり取りに想像の幅が出てくるのがまた面白いところと言えますね。
エンディング曲の「風といっしょに」
この作品のエンディングテーマが、ゲスト出演もしている小林幸子さんが歌う名曲「風といっしょに」です。ミュウツーに記憶を消されたサトシ達が次の街に向かっていく姿と共に流れるこの曲は、いまでも口ずさめるぐらい心に残っています。
命が誕生し、成長していく、そんなイメージを優しく歌い上げているこの曲は、本当にこの作品にぴったりだと思います。
当時映画館で聞いたこの曲でも泣いたのを覚えているのですが、今改めて聞くと、子どもコーラスの部分とかが更にぐっときたりして、やっぱり涙が溢れてきますね。
豪華なキャスト陣
この作品のもう一つの特徴は豪華なキャスト陣かと思います。
主役であるミュウツーは市村正親さん、それと対をなすミュウは山寺宏一さんが担当しているのは有名かと思いますが、その他にも、当時おはスタでお馴染みだったレイモンド。ジョンソンさん、今やラスボスの異名を持つ小林幸子さんなども出演しています。
特に市村さんは本来舞台俳優であり、あまり声のお仕事をしているイメージはないのですが、舞台俳優特有の表現力がミュウツーの迫力につながっています。特に冒頭のシナリオはかなり演劇調にアレンジされていますが、これはシナリオ担当の脚本家が市村さんを見てリライトしたからだとも言われています。
また、前述の通りミュウが表現する色々な意味を、セリフを全てカットされた状態で演じる山寺さんはさすがとしか言いようがありません。意味のない音に意味を与える天才ですね。
最後に
ポケモンは子どものアニメ、そんなイメージを一蹴したのがこの映画だと思います。
大人になった今だからこそ見返すべき作品の一つだと思うので、公開当時のことを思い返しながらもう一度ご覧になってみては如何でしょうか。
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