明らかに目線が変わった物語構成
主人公が変わった!?
元々の主人公は一貫して、風見ハヤトでした。しかし、少年だった彼も成長を遂げ、誰にも追い越せないチャンピオンにまで成長を遂げました。機動戦士ガンダムシリーズといえば、その圧倒的な強さはアムロ・レイに匹敵するものでしょう。
続編を描くには、主人公だった風見ハヤトは成長し過ぎました。これまではハヤト自身の成長を描いていた側面が大きかったです。しかし、それを前提とした続編のストーリー作りには限界がきたのかもしれません。
そして、新世紀サイバーフォミュラーシリーズも長きに渡って、続いてきたロングセラーといえます。現状では、シリーズ最後の作品といえる「新世紀GPXサイバーフォーミュラーSIN」では驚くべき決断をされた、といっても過言ではないでしょう。
主人公を変える、という決断は非常に斬新なことに思えます。そして、主人公は新しい登場人物ではなく、これまで風見ハヤトの最強のライバルとして描かれていたブリード加賀です。前述では、機動戦士ガンダムシリーズに例えましたが、同様に図式に当てはめると、シャア・アズナブルが主人公となった物語展開をされているという事実です。
そして、これまでの主人公、風見ハヤトが最強のライバルとして描かれる構図になります。
確かに、これまでの話の流れをそのまま続けても、大きなドラマは展開できなかったように思います。そして、シリーズの中でも人気No.1であろうブリード加賀を主人公に据えるアイデアは逆転の発想といえます。
最強のチャレンジャーとして、最強のチャンピオンに立ち向かっていく様子は胸を熱くさせてくれました。
チョット無理な設定では!?
前作シリーズでは、アルザードというマシンが登場しており、ブリード加賀も搭乗しているマシンです。そして、アルザードに登場していたブリード加賀は、そのレースで、風見ハヤトとアスラーダのコンビに勝つことができませんでした。そのオリジナルの存在として、「新世紀GPXサイバーフォーミュラーSIN」で、ブリード加賀が登場しているレースマシンがオーガだと語られていました。
オリジナルマシンであるということは、まずオーガが製作され、その後にアルザードが完成したことにならないでしょうか。そして、シリーズを重ねるごとにスペックアップが進む新世紀GPXサイバーフォミュラーシリーズにおいて、先に開発されたオリジナルマシンの方が、アルザードより速いマシンである設定に違和感を覚えました。
いくら素体の良いマシンであっても、その周りを武装するものが早いペースでスペックアップしていく新世紀GPXサイバーフォミュラーシリーズにおいて、無理がある設定なのではないでしょうか。
それがまかり通るのであれば、スペックアップしていく新世紀GPXサイバーフォミュラーシリーズに登場するレースマシンを全体的に否定してしまうことにも成り兼ねません。いくら、オーガに搭載されたバイオコンピュータが素晴らしい内容のものであっても、風見ハヤトと最新アスラーダモデルに勝てるマシンなのか、考えると無理がある設定だったように思います。
お互いの立場を尊重する結末!?
極限まで追い込んだブリード加賀の見せた力は凄まじいものがありました。その熱い想いは、風見ハヤトを凌ぐものだったように思います。
しかし、ブリード加賀が勝ってしまっては、これまで長きに渡って成長してきた風見ハヤトの存在自体を蔑ろにしてしまいます。風見ハヤトの存在を蔑ろにしてしまっては、新世紀GPXサイバーフォミュラーシリーズのこれまでの経緯まで蔑ろにしてしまうことになります。そして、風見ハヤトが勝ってしまっては、ブリード加賀の立場がなくなってしまい、「新世紀GPXサイバーフォ-ミュラーSIN」というOVA作品の存在そのものが成り立たないでしょう。
そういった意味でも、「新世紀GPXサイバーフォーミュラーSIN」の結末は期待をさせるものがあるのです。どんな闘いを演じてくれるのでしょうか、そして、どんな締め括り方がされるのか。
結果として、ブリード加賀は風見ハヤトに勝ちました。
素晴らしい闘いだったと思います。そして、ブリード加賀がみせた執念は圧巻されるほどのものでした。そして、風見ハヤトの立場はなくなったのかもしれません。
しかし、上手くフォローされており、お互いの立場が尊重されているように思います。
今回は、ブリード加賀が勝ったのです。そして、次回闘ったら、結果がどうなるのか分からなくなっています。
レースの中で、安定した強さを見せつけたのは風見ハヤトでした。
物凄い執念をみせたブリード加賀でしたが、安定した強さというより、感じられたのは瞬発力だったように感じられます。あれだけの気持ちを維持させ、風見ハヤトに闘いに挑み続けるのは無理だと思います。
また、ブリード加賀自身の身体自体も保たないでしょう。
次に闘う機会があるのなら、きっと勝つのは風見ハヤトなのではないでしょうか。
観る側にそう思わせることで、今回負けたのは風見ハヤトでしたが、ハヤトという存在の立場を尊重する終わり方だったように思います。まさに、ブリード加賀と風見ハヤト、お互いの立場や存在を尊重させる締め括り方だったのではないでしょうか。
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