哲学のような賢治のような
表紙で手に取り、開くと少し敬遠するかも
小学生の時、いとこのお兄ちゃんの部屋にあった本でした。表紙の色がとてもきれいで引き込まれたのを覚えています。開くと子供心にリアルな人間のキャラに若干怖さもあり(歯が描かれて怖かった)、未知の世界観に怖さと興味を惹かれます。
ヒデヨシのヒーロー感がないながらも存在感の大きさと、繰り広げられるアタゴオルという星のなかでの音楽や植物との関係性がドンドンと引き込まれる魅力で読み進めていくうちにキャラの絵に関してはむしろ愛着さえ感じます。
猫と人間、すべての実体化
不思議な世界観であり、宇宙観さえかんじるのはどこかで宮沢賢治の世界観を見ているかのようです。
触れると固まってしまったり、音符で階段をつくり果てしなく登っていったり。オオダコニくらいついたり、恐れられるほどのヒデヨシの食欲だったりいやしさだったり。それが憎めなかったり。
人間と猫が普通に生活を共にしている。むしろ、猫の方が多い。そして、すべての生き物が実体化して動いていることに、とても興奮します。
何かを問うているようで、答えのない哲学の漫画
教訓ともとれるような結末があるかと思えば、それを何となく日々の日常の出来事かのように次の話ではみんなのからだが戻っていたり。
先の見えない終りかたをして読者に続きを問いかけているような話があるかと思えば、オドロオドロシイ短編も入っている。多だひたすら猫の特性を描いてまったり終わる話もありと短編が多いのでたくさんの想像や妄想を駆り立ててくれます。
画が細かくタッチもきれいかと言えばそうでもないのかなとも思うのですが、カラーになったときの画はそれだけですべてのお話を垣間見ることができる世界観の広い漫画です。
子供の時に読んだときは画がちょっとうけいれずらい、でも怖いもの見たさでよみあさり。
どうしても自分で手においておきたい気分になり学生の時に集め始める。
学生になって読むとまたさらに哲学の気分にさせられる。ありもしない世界のはずなのに、ある。と思えてしまうのは、今の漫画にはない独自の世界観。
決して、特別な主人公がいるわけでもなく(ヒデヨシは別格ですが)血なまぐさいバトルがあるわけでもない。生い立ちに不幸がある設定でもなければ、悲しい結末でもない。誰かが死ぬわけでもない。憎しみや怨みといったものが特別あるわけでもない。グループがあるわけでもない。ある意味、人間ぽい日々の日常のひとこまなのだけど非日常であるのは紛れもなく。そういう意味で現代のテレビ等で流れているアニメやブラックヒーロー的な漫画とはまた違うジャンルの漫画である。
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