シリーズ最大の問題作 - 『たまゆら~卒業写真~』第3部 憧 - あこがれ -の感想

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『たまゆら~卒業写真~』第3部 憧 - あこがれ -

3.003.00
映像
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ストーリー
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キャラクター
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声優
5.00
音楽
4.00
感想数
1
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シリーズ最大の問題作

3.03.0
映像
1.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
声優
5.0
音楽
4.0

目次

乱れる作画

2015年11月28日、本作は劇場上映開始となった。このスケジュールは1年も前に決まっていた。制作側はもちろん本シリーズだけに関わっているわけではないから忙しいというのは理解できる。しかしそれを踏まえてのスケジュール設定ではないのか。なぜこのようなことを述べているかというと、本作には、スケジュールが間に合わず、その場で取り繕ったようなやっつけ仕事で済ませてしまったような場面がいくつか見られたからだ。それは通称第5話と呼ばれる前半の話で顕著に見られる。麻音をはじめ主要キャラの作画がおかしい、服の袖の長さが場面場面で違う、麻音父の手の指の折り方の様子がおかしい。乱れまくった作画は誰の目から見ても明らかであった。そして、決定的なミスが起こってしまう。

 なごみ亭事件

麻音の実家の旅館の名前は「のどか亭」だ。『たまゆら』という作品を少しかじっただけの人でも知っているほどの基礎知識の一つだ。が、第5話の中盤で麻音の実家の描写で「なごみ亭」という看板のシーンが出てきてしまった。これは致命的ともいえるミスであろう。本来はこれが発覚した時点で差し替えなどの措置を取るはずであろう。しかしそういった措置を取らず、そのまま上映、映像商品にも修正なく収録されてしまっている。重大なミスだけに気付かないなどということはあり得ないから、おそらくは見つけた時には修正できない時期になっていたことが推測される。このことからもスケジュールが間に合っていなかったことがうかがえる。

 事件はなぜ起きたのか

では、このなごみ亭事件がなぜ起きたのかについて検証してみたい。これから述べることは関係者の話でも出てきていないことなのであくまでも推論である。まずは“なぜ「なごみ亭」という絵があるのか”ということから検証する必要がある。かつて東日本大震災の年に不謹慎なテロップを流したテレビ局が問題になったが、そもそもああいった不謹慎なテロップを作成さえしなければ、放送に乗ることもなければ問題になることもなかったのである。本作品でも同じであり、絵がなければそもそもこういったミスは起きない。『たまゆら』という作品は、実際の地名が使われている作品である。そればかりでなく、現地の建物や風景も克明に描いている作品である。主人公たちが住むのは広島県竹原市であるが、麻音の実家があるのは広島県呉市の大崎下島、御手洗(みたらい)地区であり、「のどか亭」にも実在のモデルが存在する。それが「なごみ亭」なのである。以上のことを総合すると、風景や建物の作画を外部に発注するときに「なごみ亭」の看板が入った写真を参考にした業者がそのまま絵にしてしまったというのが、この絵が存在している原因ではないだろうか。外部に発注していないとは考えたくない。なぜなら、内部作業で麻音の実家として「なごみ亭」の看板入りの絵を描く人間がいたとすれば、それは『たまゆら』という作品をまるで知らない人物だということになるからである。そういう人物が内部で制作にかかわっていたとは、さすがに思いたくないわけである。スケジュールの都合上、入れざるを得かなったのかもしれないが……。そういうことで存在してしまった絵が、切迫したスケジュールの中のやっつけ仕事で使われてしまった、というのが事件の真相であろう。

 なぜ修正版を出さなかったのか

これはズバリ、スケジュール的に余裕がなかったから、ということになるだろう。まだ第四部の制作もあり、しかも出演者に不測の事態(八草ちも役の松来未祐さんご逝去)まで生じてしまい、一部を絵コンテから書き直さざるを得ない状況になってしまったことも影響していたものと思われる。この第三部の修正にまではとてもとても手が回らない状況だったことは、容易に想像できる。今後、スケジュール的に余裕が出てきた場合には、ぜひとも真の第三部として修正版をリリースしてもらいたい。

 麻音は結局どうしたのか

内容についても検証しておきたい。第5話で進路を絞り込むどころか、逆にやりたいことが増えてしまった麻音。だが、やはりまずは最初に両親に話した通り経済学を学んでいそうな気がする。麻音の原点は「のどか亭」であって、旅館があっての麻音だからである。旅館を継ぐという夢を一番大切にしそうである。その夢をかなえる基盤になることが、麻音も話していた、この旅館がどのように支えられているのか、ということ。それを学ぶために経済学を勉強すると決めたわけである。だから他の夢はともかく、その基盤になる経済学は必ず学ぶであろう。ただ、その後は結局どうするのかは予想をしにくい。他の主要キャラ3人は未来の職業はほぼ確定だが、麻音だけは想像がつかない。旅館の女将を兼ねて何をしているのか。それでも、口笛だけは卒業している気がする。麻音にとっての口笛は、自分の意思がはっきり伝えられない代わりになるもので、今は自分の意思をはっきり伝えられるようになれたから。作中から考えられるのは朗読劇を時々乙女座で開く芸人だろうか。しかし、いろいろなことに興味を持つ麻音のことである。作中に触れなかった職業に憧れを抱くことがあってもおかしくない。そういう意味でも麻音の将来だけは想像がしにくいのである。

 

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