格闘家シャーロック・ホームズ
サブタイトル「シャドウ・ゲーム」とは?
シャーロックは相手との戦いの際、実践の前に頭のなかで闘いをシミュレーションしています。これがこの映画のサブタイトルの由来のようです。自分の起こした行動を受けて相手がどう動くか、さまざまなシミュレーションを考え相手に勝つ行動を探ります。チェスや将棋などの名人戦ではよくみられる光景ではないでしょうか?あくまでも頭の中のシミュレーションなので、実際相手が思いもよらない行動をとったりすれば結果は違ったものとなります。モリアーティとの戦いでもお互いが頭の中で戦闘をしますが、どう動いてもシャーロックに勝ち目はなかったようです。しかし、それはお互い自分が勝つためにはという前提で戦っています。モリアーティの中にシャーロックが、同じ勝てないのであれば助かることをあきらめ、自分を道連れにするという考えはなかったのでしょう。
このようにシャドウ・ゲーム戦で自分が不利な立場になった時、どれだけ相手の「想定外の行動」を起こすかということが重要となるでしょう。「策に溺れる」という言葉もあるように、いくら完璧なシミュレーションをしていても思いがけない現象に対応できる能力がなければ本当に勝つことはできないのでしょう。シャーロックとモリアーティのように、お互い頭の切れるもの同士でのシャドウ・ゲームであれば余計に突拍子もない考えが必要となるでしょう。
ここではシャドウ・ゲームとして紹介されていますが、一般的には「脳内シミュレーション」と言った方が分かりやすでしょう。先に起こることを予測して対処できるようにするために頭の中で一度体験をしておきます。目の前で起こったことが経験したことがあれば、どう対処したらよいかわかりますが、はじめて起こったことであれば必要以上に慌ててしまうことがあります。そのようなことが起きないようにするための、危険回避能力のひとつのようです。
シャーロックの逆鱗に触れてしまったモリアーティ
この映画ではワトソンに対するシャーロックの愛があふれています。自分の命を投げ打ってまでもモリアーティを倒したかったのは、モリアーティがワトソンの命を狙ったからでしょう。シャーロックにとってワトソンはとても大事な友人です。それは唯一自分がどんな人間であろうと、自分を見捨てない家族以外の人だからでしょう。実際ワトソンは、愛犬を実験台にされ、メアリーを川に落とされ、シャーロックに対しどんなに怒っていても、結局は彼を許してしまいます。そう考えるとモリアーティの「ワトソンを殺したら、シャーロックに大打撃を与えることができる」という考えは正しかったのでしょうが、どうも裏目に出てしまったようです。
一見シャーロックの行動は、ワトソンを巻き込むだけ巻き込んで、結局自分の仕事を手伝わせているだけのように見えますが、ワトソンの命を守るためにありとあらゆる仕掛けをしているところなどは天才シャーロックなりの愛情表現のようです。
いろいろな姿に変化するシャーロック
これまでのシャーロック・ホームズとはまるで違い、悪癖がクローズアップされているようなシャーロックですが、変装も悪癖の一つなのでしょうか?中国人に始まり、ジャングルと化した部屋で植物になりきり、女装、ジプシー、ソファといろいろな姿で登場します。ほとんどがあまり意味のない変装ですが、最後に迷彩服でソファに変装しているところをみると普通に変装するより、迷彩服で何かになりきるほうが気に入っているのでしょう。なにか意図があってしているのか、それともただ単にしたかっただけなのか、何を考えているのかわからないシャーロックという人物をあらわしているようです。
今回の映画も前回同様アクションシーンが満載の映画です。シャーロックの推理力は主に戦闘シーンで発揮されているようです。シャーロック・ホームズといえば名推理で事件を解決していく探偵で、あまりの推理力に普通の人では見過ごしてしまうようなことから事件を解決していくというイメージが強いでしょう。しかし最近では様々なシャーロック・ホームズが演じられています。ファンの間では原作に一番近いのはジェレミー・ブレットが演じたシャーロックといわれているようです。とはいえ、シャーロックという人物も一言では言い表すことができないくらいいろいろな顔をもっています。ヴァイオリンを奏でたり名推理をしたりする紳士的な面をもっている反面、薬物依存であったり人嫌いであったりという一面もあります。シャーロックのどの性格に重点を置いて人物像を表すのかによって、まったく違ったシャーロックとなるのかもしれません。シャーロック・ホームズにはボクシングがプロ級という一面があります。アイアンマンをはじめアクションスターでもあるロバート・ダウニー・Jrだからこそ、格闘家である一面をクローズアップしたシャーロックとなったのかもしれません。
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