セルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウエスタンの傑作「夕陽のガンマン」 - 夕陽のガンマンの感想

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セルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウエスタンの傑作「夕陽のガンマン」

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
4.5

人名が軽視される所では、時には殺人が金になった。そこで賞金稼ぎが生まれた。
このセルジオ・レオーネ監督の「夕陽のガンマン」の物語は、こんな乾いた口調で始まる。

二人の凄腕のガンマンが、共通の敵に狙いを定める。
その首に高額の賞金がかかった殺人犯インディオ。

賞金稼ぎの一人は、初老の元軍人で、モーティマー大佐。
カロライナ随一のガンマンで、身なりもきちんとした紳士。
彼がインディオを狙うのには、別の理由があった。
もう一人は、新顔の賞金稼ぎで、現在、荒稼ぎ中。
目にも止まらぬ早撃ち。

この二人が、時には協力し、時には騙し合いながら、インディオとその手下を追い詰める。
自分の仲間までも騙して殺しながら、悪事を重ねるインディオが、時折、虚ろな目で思い出すのは、大切にしている時計の裏側にそっと隠した写真の美しい女性。

インディオと手下の首にかけられた賞金を山分けする算段の二人の賞金稼ぎは、徐々に目的に近づくが、やがてインディオにその計画を見破られる事に。

人を殺す時の約束として、時計のオルゴールを鳴らすインディオ。
その音色が鳴り止んだ時、二人は万事休すと思われたが--------。

この映画は、音楽が実に効果的だ。妙に記憶に残る、いかにも西部劇風でシンプルなメロディ。
時にはバロック調の旋律も劇的に響く。
さらには、哀愁を帯びたオルゴールの音色も混じる。

美しい旋律を生み出す映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネの素晴らしさが際立っている。

190センチを超える長身のクリント・イーストウッドが実に若い。
帽子にポンチョ、無精髭にくわえ煙草と、その後の彼のイメージを決定づける姿で颯爽と現われる。
クールなのに、ちょっと軽みのある演技が実にいい。

女っ気がほとんどないこの映画で、唯一出てくるのは、インディオが虚ろな瞳で思い出す若い女性。
この美しい人が、物語の鍵を握る。

「俺の名はモーティマーだ!」と叫ぶ初老のガンマン。
驚くインディオ。二人が大切に持つ、裏側に写真のあるオルゴール付きの時計で、敵のインディオは、実は家族同然であることがラストで判る。

敵役のインディオですら、この瞬間を待っていたかのようなラストの決闘シーンは、たまらない緊張感が走る。

夕陽のガンマンは、男の美学だ。
「駅馬車」「真昼の決闘」「シェーン」を世界三大西部劇だと位置付ける私も、プラスアルファーの番外編として、この「夕陽のガンマン」をランクインさせている。

通常、マカロニ・ウエスタンは、西部劇の中でも低く見られていて、バンバン!と拳銃をぶっ放し、殺した人数の多さが映画のヒットに比例するなどと言われている。

しかし、この「夕陽のガンマン」は、何かが違うのだ。
確かに人は沢山死ぬけれど、叙情性が際立っていて、特にラストは印象的だ。

登場人物が、ヒーロー然としていないところが、実にいい。
クリント・イーストウッド扮するガンマンには、名前すらないのだ。

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