時効直前の1日
たった1日
時効直前の1日を描いた作品で、時効が成立してしまうことに焦る刑事と事件関係者が自分の知っていることをゆっくりと話していくという物語の展開がアンバランスで、話の続きが気になる引き込まれた作品です。
この話は、高校で英語を教えていた女教師が殺された事件を解決するために動く警察と、その関係者を取り調べ供述を引き出していくという物語です。
初めは学校へ忍び込み、テスト問題を盗むという「ルパン作戦」を発案した喜多の供述から始まりました。読み始めは殺人事件とは関係なさそうな期末テストを盗む計画であったり、高校での素行などが書き連ねてあり、殺人事件はどうなってるんだ?と思うほどでした。
しかし、ルパン作戦を実行し4日目に舞子先生が死体で発見されてからは、早い展開で犯人探しをする展開で進んでいきました。それと同時に、現実でも時効が迫っているため、事件関係者について消息を調べたり連行したり供述を取ったりなど、1日の出来事とは思えないほど、たくさんの出来事があって読み応えがありました。
ラストまで読んで、たくさんの情報や出来事等があったにも関わらず、この物語がたった1日の警察の動きと事件関係者の回想を描いていることに驚きました。
意外な真実
舞子先生は男性を引きつける魅力を持つ人物として描かれていました。そのためレズビアンであるなど話が進むにつれて意外な真実が明らかになったと思いました。
登場してきた人物で、以外で分からなかったのは幸子でした。自殺した相馬に妹がいたことは、序盤で描かれていましたが、物語の始めから登場していた美人婦警が事件関係者だとは思いもしませんでした。頭の切れる人間で捜査に加わっているような描き方だったので、相馬の妹と明かされた時には驚きました。
伏線がすごい
ルパン作戦と峯舞子殺しがキーワードとしてあった作品ですが、他にも序盤からたくさんの伏線が張られていたので、何度も読み返したくなる作品です。
橘と鮎美は付き合っていましたが、周囲には分からないように喫茶ルパンで会った時にはトウシを使って伝えたいことを言ってみたり、幸子が指摘したように、事件後ルパンに着た鮎美が橘にすがるような視線を送っていたなど、男女の関係を思わせることなどもきちんと描かれていました。橘が黙るのも決まって鮎美のいる時だったというのも、改めて読み返して関心しました。
事件についての違和感も、気持ちの良いものでした。
ルパン作戦で初日から新しい金庫を開けていたのに、最終日だけ古い金庫を開けていること、サンオクさんが鍵を間違えて渡したこと、サンオクさんがあの高校の卒業生であることなどなど、数えきれない伏線・違和感が始まりから散りばめられていましたが、事件の全容が見えて違和感がなくなりスッキリしたラストでした。
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