シビラシステムと私たちの世界の
犯罪係数と現実世界の犯罪
まず、注目していただきたいのはシビラシステムの犯罪係数です。サイコパスの世界では、ご存知かと思いますが、犯罪係数の高さを測ることによって人を裁いています。そのような非現実的なものはアニメだけだろうと思う方も多いのではないかと考えています。しかしながら、現代社会では人間の行動自体がデータ化され、統計データを元にシステムを構築し、活用しています。例えば、アメリカでは人工知能を搭載した兵器をすでに活用しており、成果をあげています。そのような兵器は人間のパターンを分析し、どのような敵が武器を持っているのか、相手が子供や女性であっても爆弾などを隠し持っていないかどうか、といったことが瞬時に判断できるようになっています。実際にイスラム国との戦いで無人ロボット兵器が活躍していることは事実です。人工知能の発展が著しい社会において、ロボットが個人、あるいは人間を集団として監視すること、ロボットが今の警察の役割の一部を担うことが可能になるような世界になるのはそう長くないと、日々のニュースを見て感じています。
日本の官僚制度とシビラシステムの類似
SYCOPASS1でサイガ先生が「理想的な官僚とは憤怒も不公平もなく、憎しみも激情もなく、愛も熱狂もなくひたすら義務に従う人間のことをいう」とマックス・ウェーバーを例に出し、同時にシビラシステムがこれに近いことが分かりました。また、ジェレミー・ベンサムのパノプティコン、一望監視施設の例にだし、シビラシステムの支配についての説明を分かりやすく解いています。特に前者の内容はSYCOPASS2において、より明確にシビラシステムは体現してきています。それはカムイという存在がありながら、それを認めようとしない人々、ただ消そうという判断をしようとうするシビラシステムが例に当てはまります。それは日本の官僚、司法にもあてはまります。日本の事務次官や最高裁判所長官ですら一般的には理解されていないため、国民が理解できない政策が行われたとしても、官僚個人が批判や責任をとる事態はほとんどおこりません。さらに、日本の行政機関は国民の代表者である国会議員が国会で制定した法律にのとって実行しているように見えるため、官僚が権力の行使をしているとは見られません。SYCOPASSに登場する監視官や執行官もシビラシステムの命令において実行しても、本人たちが責任を取る必要はありません。しかしながら、SYCOPASSの世界において、国民はシステムの末端である彼らの行動の正当性を理解することでシビラシステムが性格に機能しているが認識できます。これは日本もかなり近いと言えると思います。日本の国権の最高機関である国会での政策立案は国会議員ということが一般的理解ですが、実際には行政機関である省庁が政策案を提出し、それを国会議員が答弁し、政策を作っていることが多々あります。そのような間接的支配ともとれる行政機関に対して、国民は否定することが難しい立場にあると考えられます。
ツネモリアカネと私たち
シビラシステムが持っているものは、一言で表すならば「知識」です。その知識には教養的知識、実務知識も含まれています。その知識によって大衆を支配しているわけですが、その優越性をSYCOPASS1ではマキシマショウゴが剥ぎ取ろうとして失敗しましたが、2ではカムイキリトが疑問を投げかけ、シビラシステムの認識を変えました。それらの状況を深く理解し、疑問を持ちながらも受け入れて進んでいくツネモリアカネには私たちの現在と未来の社会に対しての立場を考えさせてくれるキャラクターだと私は考えています。さきほども申し上げたとおり、現代社会において、技術発展は目覚しいものであり、私たちに便利をもたらしてくれることは間違いないと思います。しかし、今後人工知能が人間の知能を超えて世界のシステムの構築を行ったとき、あるいは人間を監視する役割を担ったときに私たちは受け入れることができるのか、また否定することができるのか、分かりません。そのような機会をSYCOPASSというアニメは与えてくれていると私は思っています。
最後に
SYCOPASS2では1同様にたくさんのことを勉強させてくれるアニメだと思います。哲学から、経済学、社会学まで幅広く学ぶことができます。その例として著名なジェレミー・ベンサム、ミシェル・フーコー、そしてマックス・ウェーバ、彼らを通して作品の理解が深まりました。そして、このアニメを通して現代社会で起こりえる問題を理解し、分析していくことで、今後の社会のあり方、特に人工知能との付き合い方を考えさせてくれるアニメだと私は考えています。かなり乱雑なまとめになってしまいましたが、SYCOPASS2を通して読者のみなさまには、批判してくれても、評価してくれてもいいのでまたこれを機会にSYCOPASSに興味をもっていただけたらうれしいです。
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